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わたしたち三和紙工の思い

小ロットの特注紙皿・紙コップ・プラカップを請け負うようになるまで

三和紙工株式会社が、当時は業界でもやる企業がほとんど無かった特注オリジナル紙皿の極小ロット(数量)企画を立ち上げた背景には、逆境を打破しようという考動破壊の精神がありました。その物語をこれからお話し致します。世界が21世紀に入ったばかりの頃。三和紙工株式会社は、たくさんの紙製食品包装容器をOEMで製造していました。

OEMとは…「Original Equipment Manufacturing(Manufacturer)」の略。他社ブランドの製品を製造すること。三和紙工株式会社が行っていたOEMは、依頼主(ブランド側)が製品の仕様を決めて製造を三和紙工に依頼し、完成した製品の管理権と所有権は依頼主が持つ、という形式でした。

OEM生産を受託していたアイテムは、紙皿だけではなく、フライドポテト用の紙容器やからあげの紙容器なども受託していました。納品先は100円均一ショップ、ホームセンター、コンビニエンスストア、アミューズメントパークなど多岐に渡っていました。OEMの取引先は大手企業様になりますので、受注ロットも膨大になります。その為、注文が入ると通常の生産体制では対応しきれない状態になり、社員はOEM商品の製造に忙殺されていました。特に繁忙期は厳しく、製造部門を2交代制にするという生産体制を取らなければいけませんでした。1班は2:00~17:00、2班は12:00~AM2:00、という過酷なシフトを組み、24時間体制で機械を回して供給を維持継続していたのです。壮絶としかいいようのないこの勤務体制を、酷い時には5週間も継続した時期がありました。しかし、このような無理を押し通す仕事というのは、長く続ける事ができません。

イレギュラーな勤務配置や長時間に渡る労働により現場は疲弊していきました。それだけではなく、財務的にも、決して健全な状況とは言えませんでした。所謂「売り上げは高いが利益が無い」という状態だったのです。工場の現場勤務をしていた従業員の労務費は、残業代・休日出勤代などの支払いが加算されて、通常の2倍ほどもありました。様々な事情で固定費が上昇した時期などは、その値上げ幅に利益が追い付かず、赤字で販売するような事もありました。薄利多売、あるいは無利益多売、時には赤字多売でがむしゃらに働いていたある年の事です。業界全体の動きとして原材料や副資材の値上げが一斉に起こりました。製造業では輸入材料の高騰や円安などの影響を受けて、業界全体が値上げをせざるを得ない状況になる事があるのです。原価を圧迫する値上げの動きに、業務部の仕入担当者は頭を抱えました。しかもこの時、追い打ちをかけるようにして、OEM製品の依頼主様から値下げ要請が入ってきたのです。ここにきて会社はほとほと参ってしまいました。現状維持の価格ですら赤字になるという状況なのに、値下げ要請など受けたら、会社は立ち行かなくなってしまいます。上層部は連日会議を繰り返し、激論を戦わせました。そして最終的に、次のような【決断】をしました。

「値上げしよう」
「希望する値段が通らなければ、受託を断ろう」と。これは、会社としてはとてもとても大きな、清水の舞台から飛び降りるような決断でした。何故ならOEM製品をすべて合計した総売り上げは、当時の年商の半分を占めていたからです。つまり、値上げを断行するという事は、言い換えれば、「場合によっては年商の半分を捨てる覚悟を決めた」という事だったのです。けれどこの時、ただOEMを失う覚悟をしたのではありません。三和紙工株式会社は、会社の方針そのものを大きく転換する事にしたのです。今までの「売上額」を追い求める大量生産・低価格・薄利多売をやめ、商材に付加価値を付けてその価値に対価を支払って貰う、という【減収増益】を新しい会社の指針として定めたのでした。この時会社が目指したのは【中小企業ならではの小回りとネットワークを生かした営業活動】わかりやすい言葉で言うなら「お客様の希望を聞いて、他社がやらない・やりたがらない事をやろう!そこにきっと活路がある!

さて……ではいったい、何を、誰に、売ったらいいのか?それまで三和紙工株式会社は、卸会社や商社との取引を中心に行っていて、末端ユーザーとの接点は皆無に近い状況でした。マーケティングリサーチをするにも、コネクション自体が存在しない状況。「需要はあるけれど他社がやりたがらないニッチなニーズはどこにあるのか」を調査するのですら手探りの状態です。この時に案として浮上してきたのが、会社のホームページを見てぽつぽつと入り始めた「特注オリジナル商品」に関する問い合わせのメールや電話を元にした「オリジナル印刷商品の製造販売」でした。当時まだ食品包装容器を製造する業界では、ホームページを持っている会社はそれほど多くはありませんでした。

三和紙工のホームページにしても、社員が独学で勉強して既存のソフトを使用して作った、拙い素人じみたサイトでした。しかし、そんなサイトを経由して、まさにこの時三和紙工が喉から手が出るほど欲していた「最終消費者」様のお声が入り始めていたのです。そうした問い合わせを下さっていたのは、主に印刷会社や企画会社さんでした。これまで取引をした事が無かった業種の会社さんです。そうした異業種の企業との顧客対応は、当時営業だった現在の常務取締役が一手に担っていました。初めて接する異業種との営業活動は、試行錯誤五里霧中の内容でした。

苦労もたくさんありました。業種が違えば常識も違います。紙器業界や製造業では普通に使用している言葉が通じなかったり、製造ロットに対する認識がまったく違っていたり、取引条件の商慣習が違っていたり……そんな中で営業が特に痛感したのが、「製造ロットに対する一般人と製造メーカーの認識の違い」でした。それまでの営業活動で受注する特注製品は、OEMに代表される大量生産です。基本的には数十万ロットで請け負うのが従来の食品包装用紙器容器製造業界の常識でした。当時出始めていた「小ロット」と呼ばれている数量でも万単位だったのです。しかし、一般消費者が求めているのは、多くて数千、場合によっては数百の単位で特注品を作って欲しい、というものだったのです。業界の常識と、一般のニーズは違う。三和紙工は「業界の常識」を打ち破る事にしました。

【極小ロット】と名付けて、1ケースからでも特注オリジナル品の製造を受注する事にしたのです!

もちろん、そこには不安もありました。少ない数量での特注品製造をすれば生産性も下がり、結果として、紙皿や紙コップ1枚の単価が非常に高くなるという事でもあります。条件によっては1枚単価が100円を超す、そんな単価表が作られました。社内でも「こんな値段じゃあ誰も注文なんかしてくれないだろう」という意見が出ましたし、金融機関からは強く止められました。【極小ロット企画】なんかで、OEMを失った穴を埋められる訳がない……周囲の誰もがそう思っていました。しかしそれでもOEMを捨てて新しい未来へと舵を切る、その勇気の後押しをしたのが、当時はまだ社則とはなっていなかった「考動破壊」の理念の萌芽です。もちろん、経験や実績はとても大切な財産です。蔑ろにしてはいけないものです。けれどもそれに囚われていたら、未来は拓けない。確かに周囲が言うように、従来の顧客がこの新しい企画に乗ってくれる可能性は低いのかもしれない。でもインターネットで開拓する新しい顧客層には違う需要が見えています。もしかしたら、今まで知らなかった市場がそこにあるかもしれない。三和紙工は「業界の常識の外」へと、大きく扉を開く事にしたのです。

その結果……

新しい世界から、注文が、次々に飛び込んできました!

最初は企業様からの依頼がご注文の中心でした。〇周年記念パーティ、美容室の独自アピール、企画イベント。テイクアウト販売の紙容器。しかし、個人様からの注文もありました。結婚式でオリジナルの紙皿とプラカップを使いたいというお客様の時は、社員一同、心からの祝福を込めて製造させて頂きました。あの時の事は今でもよく覚えています。QRコードが普及し始めると、容器としてだけではなく、宣伝広告品としてオリジナルの紙皿や紙コップ・プラカップを注文されるお客様も現れ始めました。そうしたお客様は、ニーズありきのお客様です。1枚の単価についてはそれほど気にしません。評価基準は「安さ」ではありませんでした。三和紙工の小回りの良さ、例えば「総額予算」で何ができるかを提案したり、少ない数量でも製造を請け負ったりする事に対して、お客様は評価を与えて下さったのです。そうして時は過ぎ、現在では昔からのお得意先様にも【極小ロット企画】が浸透し、頻繁にお問い合わせやご依頼を頂けるまでになりました。

agata kitchen studioさんの料理とマッチする紙皿「Za-ryu」洗練されたデザインで紙皿の概念を覆す!

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なお、この決断において、当時受注していたOEMはほぼすべてが取引終了となりました。今となっては「大量受注・過酷労働・大量生産」は懐かしい思い出。会社の歴史の一部となりました。当時の事を覚えている人間は従業員でもほとんどいません。しかし、当時の会社の決断に関わった人間は、決して忘れる事は無いでしょう。社運を賭けた大きな決断。

行動規範のひとつ「考動破壊」

行動規範のひとつ「考動破壊」

「今までの慣例ではなく、新しい前例を創り出せ!」
その思いで創り上げた「1枚だけでもオリジナル印刷の紙皿を作ります」というこの極小ロット企画は、三和紙工の精神の屋台骨なのです。

次々と変わる新しい世界

極小ロット企画を始めた当時、お問い合わせを下さっていたのは、主に印刷会社や企画会社でした。「独自の紙皿を作りたい」と考えた時、多くの企業が問い合わせるのが、印刷会社や企画会社だったからです。当時のお客様が作成される紙皿や紙コップ・プラカップはプロのデザイナーがデザインした、非常に洗練されたおしゃれな柄ばかりで、製造も張り切って仕事をしていました。やがてインターネットが更に普及すると、ファストフードをテイクアウト販売するお客様や、ケータリング関係の業者様が、直接当社にお問い合わせを下さるようになりました。
最終消費者に近くなればなるほど、専門的な知識を持たないお客様も増えてきます。特注の紙コップを作ってイベントで使用したいが、データ版を作るのに必要なイラストレーターというソフトは持っていない、というようなお客様もいらっしゃいました。そんな時は営業が相談に乗り、時には写真データから版データを作成する事もありました。

イラストレーターでデザインをつくっている様子。「PLAYWORK」とは三和の行動規範の「遊ぶように働く」から

イラストレーターでデザインをつくっている様子。「PLAYWORK」とは三和の行動規範の「遊ぶように働く」から

 

従来のお取引様からもお問い合わせが入るようになると、5枚や10枚でシュリンクパック包装をしたいというご要望も増えました。再販売用の包装をする場合にはバーコードを印刷したラベルを支給して頂く必要がありますが、個人様からのご注文でも数枚をシュリンクパック包装して納品する事もできます。最近になって、プラスチックを使わないようにという政府の方針により、プラスチック商品を紙製品に切り替えようという動きが増えてきています。その為、従来プラスチックでのオリジナル印刷製品を発注されていたお客様から紙製品に切り替えたいという問い合わせなども入り始め、再び大口の受注が増え始めています。ですが、三和紙工はこれからも、お客様のご要望があれば1枚からでも紙皿を作ります。ロゴ・イラスト・写真……

イラストレーターでデザインしたものが様々な工程を経て紙皿になりました!

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貴方の選んだデザインを、紙皿や紙コップ、プラカップに印刷してみませんか?

 

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