紙トング 誕生秘話
ありそうで無かった紙トング。この商品は、三和紙工株式会社が独自に開発した特許製品となります!トングの歴史は古いけれども、何故か誰も作らなかった紙トング。
三和紙工株式会社は何故トングを紙で作ろうと考えたのか……紙トングの誕生秘話をご紹介致します!
トラブルから生まれた逆転の発想
ポテト容器の中に刃物が混入?!
三和紙工株式会社の特許商品の1つに、自立型紙容器リバティーシリーズがあります。
このリバティーシリーズの姉妹商品に、お客様の特注品がありました。
お客様はポテト販売用としてこの紙容器をご利用頂いていたのですが、ある時、苦情が届きました。なんと、容器内のポテトの中に刃物が入っていたというのです!食品の中に刃物が混入、という状況に、末端販売店は激怒!クレームが卸業者・中間商社を通して製造メーカーである当社に届いた時には、大変な騒ぎになっていました。
犯人は……三和紙工(株)では無かった!
当初、このクレームが当社に寄せられた時点では、「紙容器を製造する際に展開図を抜く抜き型の刃が欠けて商品に混入し、そのまま容器化されてしまったのでは?」という予測が立てられていました。そこで当社は製造委託をしている工場で徹底調査を開始。
しかし……製造工程に使われている機械の抜刃・抜型のどこにも破損は見つかりませんでした。これは製造工程で混入したのでは無いのでは?
という事で、改めて、ポテトに混入していたとされる金属片を調べたところ……実はこの金属片は刃物ではなく、ポテトを販売している末端店舗の金属トングの破片だったのです。ポテトを容器に移し入れる時に使用されていた金属トングの板バネが、金属疲労により破断され、それが紙容器の中に落下。店側がそれに気付かずポテトを入れて販売してしまったものだったのです。
謝罪と冗談から生まれたコロンブスのアイディア!
三和紙工株式会社のミスでは無かった!
という事で、激怒のクレームを入れてきた取引先様各位からは、犯人扱いして申し訳なかったという謝罪がありました。
その際に、取引先様の担当者様が、冗談半分で「金属は経年劣化などで折れてしまうんですよね。そういえば三和紙工さんは紙容器屋さんですよね。紙でトングを作ってみたらどうですか? 紙なら折れないし、割れないし、安全ですし」と仰ったのです。
商品開発には遊び心が大切!
当時取引先との営業・交渉を担当していたのは、当時は営業だった、現在の常務取締役です。
常務(当時は営業)はこの時の会話をしっかりと記憶して、心のメモ帳に書き込んでいました。そしてその後、別の取引先様と、紙スプーンや紙フォークといった、紙製のカトラリーを作ろうという話が持ち上がった際に、「一緒に紙トングも作ってみたらどうでしょうか?」と提案してみたのです。商品開発は遊び心も大切です。
紙製のスプーンを作る技術を応用すれば紙トングも作れるのでは……と試しに作ってみたのが、現在当社が製造販売している紙製トングの試作品なのです!
いざ、実用化へ!
紙トング、特許申請・特許取得
常務(当時の営業)は試しに作ってみた紙トングを、当時の社長であった現会長に見せました。
「これは面白いんじゃないか?」
会長(当時社長)は試作品の紙トングを見て、ピピッとアンテナが立つのを感じました。
「特許を取って商品化しよう!」
こうして三和紙工株式会社の紙トングは特許申請され、無事に特許を取得する事ができたのです!
製造委託は攻防の末……
試作品の特許申請はおりたものの、自社の工場設備では紙トングを商品化するのは難しい状況でした。そこで三和紙工株式会社は、設備的に製造が可能であろう会社に製造を委託できないか打診しました。打診を受けた会社は、これは面白い!と考えたようで、自社でも類似商品を検討。しかし、三和紙工株式会社が取得している特許に抵触しない製造方法を考案する事はできませんでした。そんな攻防の末に、紙トングは、全製造をその会社に委託して商品化される事が決まりました。
既製品か、特注品か
商品化のめどが立った紙製トング。
とはいえ、販路が無い状態で製造に着手するのにはリスクが伴います。
三和紙工株式会社はまず、商品のアイディアの元になった大手商社に話を持ち込みました。
しかし……
当時その商社が取引をしていた、ポテトなどのテイクアウト販売をする店舗様は、全国展開中の大チェーン店。数千店舗というその系列店舗すべてに紙トングを納品するとなると、とんでもない数になります。
まだ開発段階で大量製造の為の設備も整っておらず、製造能力的にも、コスト的にも、契約に見合う条件を用意する事ができませんでした。
特注品として販路を確保するのは難しい……
けれども、商品は絶対面白い!
そこで三和紙工株式会社は、自社既製品として紙製トングをリリースする事を決定したのです。
「こんなもん使えない!」投げ捨てられたサンプル
三和紙工株式会社は、お取引のある会社に紙トングのサンプルを持ち込んで、取扱をお願いして回りました。その当時、製造メーカーは、新商品を開発しても、末端ユーザーにその製品の価値を問う事ができない状況でした。今でこそインターネットを利用した宣伝や通信販売ができますが、当時はそうしたツールは存在せず、お取引のある商社や卸業者さんに持ち込み、そこから小売店に紹介して貰い、小売店が店頭に並べてくれて初めて消費者の目に留まる……という状況だったのです。紙製トングは、食品のテイクアウト販売で利用できる商品だと考えた当社の営業は、まず、大手のスイーツテイクアウトチェーン店と取引のある大手商社に紙トングを持ち込みました。そして、チェーン店に紹介して貰えないかとお願いしたのです。
すると……
「こんなもん使えない。売れない」
商品をチェーン店に紹介して貰うどころか、大手商社の担当者は、その場で紙トングを投げ捨てたのです!!!
諦めない!この商品は、絶対需要があるはず!
しかし営業は諦めませんでした。
三和紙工株式会社には半世紀の社歴の中で培ってきた取引先様がたくさんいらっしゃいます。
営業はサンプルを持って数百社の取引先を回りました。
「こんなのは見た事が無い!」
そんな風に言ってくれるお取引様がたくさんいました。
大手商社の勘だけが正しい訳じゃない。
きっとこの商品を必要としている消費者がいる。
三和紙工株式会社は、コツコツと少しずつでも紙トングを売っていこうと決めました。
新しい商品の価格は売り手が決められる!
お取引様に商品を紹介する際に参考売価を提示します。すると皆様一様に首を傾げました。
その時三和紙工株式会社は気付きました。
まだ世の中に出ていない新しい商品の価格は、売り手が決められる!
それまで三和紙工株式会社がメインで取り扱っていたのは、紙皿を中心とした食品用包装資材でした。それらの商品は、少しずつ用途や形状が異なっていても、基本的には既に市場に出回っている物です。しかし、紙トングは違いました。食品用の紙製トングは、まだ世の中に存在しない商品でした。その為、商品を紹介された商社や卸業者は、提示された金額が高いのか安いのかを判断する経験や比較対象を持っていなかったのです。紙トングは、三和紙工株式会社が提示した金額で販売される事が決定しました。
「まだ世の中に無い物を開発する」
その事がいかに重要であるかを、三和紙工株式会社の営業達は胸に刻んだのです。
インターネットや展示会を通じて……
こうして販売が開始した紙トングですが、大々的に広告を打つ事もできない状況でしたので、販売実績は採算ぎりぎりという状況がしばらく続きました。
メインのお客様はケータリングサービスで、平成の終わり頃から増え始めたケータリングでご利用頂くケースが多い状況でした。ご採用下さったお客様にはとても感謝しています。
小さな地方の工場が開発し、取引先様だけに紹介して販売している商品が、採算の取れるベースで売れたという事は、実はとてもすごい事なのです。
大ヒットにはなりませんでしたが、三和紙工株式会社としては、充分な成功商品開発でした。
やがて世の中にはインターネットが普及し、三和紙工株式会社もホームページを作りました。ネットショッピングモールにも直販店を出す事になりました。
インターネットを通じて、紙トングを宣伝できるようになったのです。
それから、展示会にも出展して、紙トングをドーン!と展示しました。
展示会に紙トングが並べられていると、たくさんの人が面白がって見に来てくれます。
まだまだ認知度が足りていないという事でもありますが、その分、この商品には伸び代がたくさんあるという事でもあるのです。
ありそうで無かった紙トング、だけどあるよ、ここにあるよ!
2020年から始まったコロナ禍でイベントが軒並みキャンセルになり、式典などをお得意様にしていたケータリングサービス系での紙トングの需要は激減しました。
ですが、それと同時に、インターネットでは、パン屋さんやビュッフェなどで「使い捨ての紙トングがあればいいのに」という声が生まれ始めました。
あるよ!
ここにあるよ!
三和紙工株式会社が紙トングを製造販売しているよ!
関東地方の真ん中、埼玉県の片隅にある小さな紙器容器製造会社が作る紙製トング。
大量生産ができないのでコストの面ではなかなか需要に見合う金額を出す事ができませんが、それでもコツコツと販売を続けています。
どうかこれからも、三和紙工株式会社の紙トングを、よろしくお願いいたします。